傍らに書物

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『うわさとは何か』

『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』 2014年 松田美沙著

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・デマ、流言、ゴシップ、風評、都市伝説等、多様な表現を持つ「うわさ」について書かれた一冊。

 


・そもそものうわさの定義について書かれているのが参考になります。うわさの公式は 「R~ⅰ × a

R(rumor)…うわさの強さや流布量
ⅰ (Importance)…当事者に対する問題の重要さ
a(Ambiguliy)…証拠のあいまいさ
 うわさの強さや流布量は、当事者に対する問題の重要さと、その論題についての証拠のあいまいさとの積に比例するというもので、「重要さ」と「あいまいさ」の足し算ではなく掛け算というのがポイントです。


・後半のあいまいさへの耐性についての部分で、SARSなどが引き起こした社会的混乱を議論するなかで、①リスク論が描く社会と②私たちの行為判断として描かれる社会という見方ができるとする心理学者の中谷一也氏の考えを『リスクのモノサシ』から引用しています。
 ①リスク論が描く社会…リスクがまったくの白、つまりゼロリスクである領域はない灰色の社会。安全と危険を決めるはっきりした境界線はなく、境界線はあくまで一種の目安。
 ②私たちの行為判断として描く社会…安全か危険かがはっきり決まっており、白い領域にある限りは安全が保証されている

・このギャップを埋めるのは正確な情報が必須となるのですが、いつも十分な情報が得られるとは限らず、このあいまいさへの耐性を持つことが風評被害やうわさ対策に重要としています。
 情報が錯綜する中ではマスクなどを調達するのは合理的な行動かと思いますが、過度でない自分なりにリスクを減らす行動とあいまいさをある程度受け入れていく気持ちも必要かと感じました。


・他にもうわさには気持ちの共有や社交としての役割があることや、ある程度の類型(例:〇月〇日に大地震が起こる、今年の〇月に〇〇山が噴火する)があり、それを学ぶことでうわさを真に受けないというなど、興味深い話が満載でした。