傍らに書物

年間100冊を基準にジャンルを問わず読んだ本をアップしています。

『国宝 上 青春編、下 花道編』

『国宝 上 青春編、下 花道編』

吉田修一 2021.9 朝日文庫

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映画があまりにも素晴らしかったので、小説にも手を伸ばしました。

上下巻と分量はありますが、冒頭――長崎・立花組の新年会の場面から一気に物語に引き込まれます。極寒の中、外で客を迎える若衆たちを描写した一文、

「冷え切った指をこっそりと揉んだり、感覚のなくなった足の指を縮めたりと、小さな暖を貪ります。」

この美しい表現に、まず心を掴まれました。


物語の大きな流れは映画と共通していますが、映画では描かれなかった細部が数多く盛り込まれており、別の角度から楽しむことができます。


個人的には、映画を観てから小説を読むことで、より深く作品世界を味わえると思います。

 

『戦争 ロバート•キャパ』

『戦争 ロバート•キャパ』

2025.3 クレヴィス

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著名なカメラマンとして名前だけは知っていたロバート・キャパ。しかし、その波乱に満ちた生涯についてはほとんど知らなかったため、本書を手に取ってみました。


ハンガリー出身のユダヤ人であるキャパ(本名:アンドレフリードマン)は、1936年に勃発したスペイン内戦をきっかけに、戦争写真家としての道を歩み始めます。その後も、日中戦争、ノルマンディー上陸作戦、パリ解放、イスラエル建国といった歴史的転換点の現場に身を置き、カメラを通して“戦争のリアル”を記録し続けました。そして、1954年、インドシナ半島で取材中に地雷を踏み、命を落とします。


日本にも同年に訪れており、法隆寺や静岡を巡ったことが記されています。戦場だけでなく、そうした静かな風景に目を向けた彼のまなざしにも興味を惹かれました。


映画『プライベート・ライアン』のノルマンディー上陸シーンも強烈な印象を残しますが、キャパが切り取った“1枚の写真”には、それとはまた異なる重みと訴求力がありました。

 

#読書

#reading

#ロバート•キャパ

『超鬼速PDCA』

『超鬼速PDCA
冨田和成 2025.4 クロスメディア・パブリッシング

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本書では、一般的なPDCAサイクル(①PLAN=計画 → ②DO=実行 → ③CHECK=検証 → ④ACTION=改善)のうち、④ACTIONを「ADJUST=調整」と表現しています。この変更により、「PDCAを回しきれない」という課題に対して、より実践的にサイクルを完結できる印象を受けました。

これまで何冊かPDCA関連の書籍を読んできましたが、本書で特に印象に残ったのは、②DO(実行)のフェーズに登場する「KDI(Key Do Indicator)」という考え方です。
KDIは「どれだけ計画を実行できたか」を定量的に測る指標であり、DOの実効性を評価するものです。

たとえば、「1000ページの本を読み切る」といった最終的な成果(0か1か)ではなく、「毎週200ページ読む」といった具体的な行動目標を設定することで、進捗を定期的に確認しやすくなります。

個人でも組織でも、「計画は立てるが実行が続かない」というのはよくある悩みです。本書で紹介されているPDCAの進め方は、そうした問題の解決に非常に役立つと感じました。

『サッカーはデータが10割 最強アナリストが明かすプレミアリーグで優勝する方法』

『サッカーはデータが10割 最強アナリストが明かすプレミアリーグで優勝する方法』
イアン・グラハム(2025年3月・飛鳥新社

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・著者のイアン・グラハム氏は、2012年から2023年までリバプールFCのデータ分析部門でリサーチディレクターを務めていた人物です。

アメリカ大リーグを舞台にした小説『マネー・ボール』(後に映画化)も非常に興味深い内容でしたが、本書もそれに劣らず面白く、たとえばサラーやフィルミーノをどのような基準で獲得したのかといった裏舞台が描かれています。

・現代のデータ分析における基本的な考え方は、「ピッチ上の任意の場所に誰よりも早く到達した選手が、その場所を支配する」という「ピッチコントロール」の概念です。
 これは、単にフィジカルの優れた選手が勝つのではないという点が重要です。たとえば、メッシがカウンター時に、ディフェンダーが危険なスペースを埋めるために急いで戻る一方で、そのディフェンダーの背後に生まれた空白のスペースをメッシが活用するといったプレーが紹介されています。

・このピッチコントロールの理論に、選手の移動データ(トラッキングデータ)、時間的要素、ボール保持といったファクターを加味して分析が行われます。
 今ではこのトラッキングデータも飛躍的に進化しており、40ミリ秒ごとに、選手一人につき足・腰など29箇所のデータが収集できるとのことです。

・データ分析だけでなく、クラブ経営の視点も非常に興味深い内容です。そもそも、**「安く選手を獲得し、高く売る」**ことがデータ分析の一つの目的とされています。
 たとえば、財政的に苦しかったユベントスバルセロナは、ピャニッチとメロの移籍に際し、売却した選手についてはその年の「特別利益」として収益を計上し、一方で獲得した選手の費用は5年間の償却で分散させるという手法をとりました。これは、有望な選手の獲得が必須であるサッカークラブ経営の難しさをよく表しています。

・ちなみに、移籍した選手が新天地で50%以上の試合に出場すれば「成功」と見なされるとのことです。

『人が壊れるマネジメント アンチパターン50』

 


『人が壊れるマネジメント アンチパターン50』

橋本将功著(2025年4月/ソシム刊)

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現代は「マネジメント苦難の時代」とも言われ、コンプライアンス意識の高まりや各種ハラスメントへの配慮が求められる中で、部下との接し方や育成方法に頭を悩ませるマネージャーが増えています。本書は、そんな現場のリアルな課題に対し、「よくある失敗(アンチパターン)」を50例挙げ、それらをどう回避するかという視点から、人を壊さないマネジメントの実践法を示しています。


内容は以下の5つのパートに分かれており、具体的かつ現実的な観点からマネジメントの落とし穴を可視化しています。

タスク編
プロジェクト計画編
コミュニケーション編
キャリア編
組織・環境編

 


中でも印象に残ったのが、アンチパターン2「指示が曖昧で壊れる」です。

「言わぬが花」「沈黙は金」といった“察してほしい”型のコミュニケーションは、現代の多様な価値観の中では大きな誤解や失敗を招きます。リーダーシップにおいては、明確で具体的な言葉による指示が何より重要であると再認識させられました。


また、アンチパターン19「非現実的なスケジュールで壊れる」も、プロジェクト管理においては避けて通れない問題です。納期優先の無理な工程が、メンバーの疲弊や品質の低下につながることは、職場でも日常的に見受けられる課題です。


本書は、失敗例を“学びの素材”として提示しており、「こうすればうまくいく」ではなく、「こうすると壊れてしまう」という逆説的アプローチが特徴です。マネージャーやチームリーダーだけでなく、これからリーダーシップを担う人にもぜひ一読をおすすめしたい一冊です。

『医経分離』

『医経分離』 名南M&A医療支援部著(2025年7月 中央経済社

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・本書は、持続可能な医業経営を実現するうえで不可欠な「医療」と「経営」の分離について丁寧に解説した一冊です。

 


・医師などの医療従事者は診療に専念し、経営の専門家は資源配分の最適化や財務管理に注力することで、医療機関全体の効率性と持続可能性が向上します。しかし、この分離を実現するには、さまざまな課題を乗り越える必要があります。


スウェーデンアメリカの医療制度に関するわかりやすい解説もあり、日本における課題としては、自治体の財政格差、法制度の未整備、経営人材の不足、IT化の遅れなどが挙げられています。


・具体的なスキームとして、医療法人傘下での分院展開が事業承継の解決策となることや、日本政策投資銀行DBJ)の活用についても紹介されています。


・日本の医業全体の現状と課題を把握するうえでも、多くの学びが得られる一冊でした。

『やなせたかし80の言葉』

やなせたかし 80の言葉』

桑原晃弥(著)/2025年1月/リベラル社

 


アンパンマンの作者として知られる“やなせたかし”さんを描いた朝ドラ「あんぱん」を観て、興味を持ち、本書を手に取りました。

 


・ドラマでも描かれていたように、戦争による飢えに苦しんだ体験を持つやなせさんは、「ぼくが何かやるとしたら、まず飢えた子どもを助けることが大事だと思った」「逆転しない正義は、献身と愛だ」と語っています。厳しい時代を生き抜いた方の言葉には、深い重みと説得力があります。

 


アンパンマンが世間に広く認知されるまでには時間がかかり、テレビアニメの放送が始まったのは1988年。やなせさんが69歳のときでした。代表作が長く生まれなかったにもかかわらず、粘り強く創作を続けた姿勢には、大いに学ぶべきものがあります。